Ubuntu 10.04上でAndroid 2.2(Froyo)アプリ開発

 トヨタ自動車が.netを捨てWebアプリケーションに移行したことで、業界全般として業務アプリケーション自体がクラウドアプリケーションやWebア プリケーションに飲み込まれていくことは間違いないこととなった。GoogleもAndroid Marketとは別にChrome Web Storeを立ち上げたことからも、WindowsやAndroidなどのOSが開発者にけるプラットフォームとなる時代の先にはブラウザが開発者におけ るプラットフォームとなるのであろう。
 確かに、Android開発もDalvik Java SDKおよびC/C++ NDKの2本立てで開発ができることからも、もしもGoogle ChromeにDalvik(仮想マシン)を組み込んでNative Clientと組み合わせれば、Androidアプリ自体がChrome上で動作できるようになる。現状JavaScriptエンジンV8も仮想マシン DalvikもNative ClientもすべてGoogleの手の内にあるのだから当然と言えば当然の未来図ではある。
 MicrosoftやAppleがベンダロックインの開発を開発者に強いているのに対し、Googleは現時点(2010/06/03)における TIOBE三大プログラム言語のC(18.186%)、Java(17.957%)、C++(10.378%)およびJavaScript(2.084) の50%近い開発者に対し、Google Chromeという「OSを選ばない」もしくは「自身がOSとなりうる」というスーパーマルチプラットフォームな状況で間口を広げているわけであるから合 点がいくというものだ。Googleが「AndroidとChrome OSが融合する」といったのは、このDalvikのChrome搭載を指しているのであろう。
 その前提で行くと、今をときめくAndroid開発はChromeOS登場によって消し去られてしまう存在ではなく、Android開発によって培った 技術やCodeがChromeOSの登場時点においてすぐさま大いなる財産となる可能性が高いといえるだろう。
 せっかくAndroid開発をするというのに、未だWindowsの呪縛から開放されていない人が多いらしく、Linux環境での開発を教授している書 籍やサイトが見当たらない。そこで、今回は第一弾として、Ubuntu 10.04上でAndroid 2.2開発を行うための環境作りを公開したい。フローズンヨーグルトでも食べながら最新のOS上(Ubuntu 10.04)で、最新のOS上(Android 2.2 Froyo)で動くアプリケーションをクロス環境で開発できる悦びを堪能してください。

*** 目  次 ***
1、Android SDKのダウンロード
2、Android SDKの展開
3、Android 仮想デバイスの作成
4、Eclipseのインストール
5、EclipseにAndroid Development Tools (ADT) Pluginをインストール
6、Eclipseの設定
7、あとがき



*** 1、Android SDKのダウンロード
http://developer.android.com/sdk/
上記サイト「Download the Android SDK」より、「Linux (i386)」用のSDK「android-sdk_r06-linux_86.tgz」をダウンロードしてください。



*** 2、Android SDKの展開
Nautilusで「android-sdk_r06-linux_86.tgz」を右クリックし、展開してください。
展開する場所はhome内のどこでも構いません。
展開したディレクトリ「android-sdk-linux_86」内の「android-sdk-linux_86/tools/android」で 「Android SDK and AVD Manager」が起動します。
端末からの呼び出しもOKですが、ここはせっかくのUbuntu 10.04!GUI操作で起動しましょう。
Nautilusからの起動でOKですが、次から楽に起動させるために、ショートカットをデスクトップにおいたり、Pathを通したり適宜行ってくださ い。



*** 3、Android 仮想デバイスの作成
「Android SDK and AVD Manager」の左メニュー「Available Packages」をクリック。
リポジトリURL「https://dl-ssl.google.com/android/repository/repository.xml」の左に ある右三角をクリックしダウンロードリストを表示。
表示されたダウンロードリストの中で、下記の4つのAndroid 2.2関連のものをチェックします。
 Documentation for Android SDK,API 8,revision X
 SDK Platform Android 2.2,API 8,revision X
 Samples for SDK API 8,revision X
 Google APIs by google inc.,Android API 8,revision X
ここでのXはrevision番号を示していますので、任意の数字となります。
その後、右下の「Install Selected」ボタンをクリックするとAndroid 2.2関連パッケージのダウンロードとインストールが開始されます。
インストール終了後、「Android SDK and AVD Manager」の左メニュー「Virtual Devices」をクリック。
右上の「New...」をクリックすると、「Screenshot-Create new Android Virtual Device (AVD) 」ダイアログボックスが現れますので、適宜入力します。
 Name:はその仮想デバイスの名称です。何でもOKです。
 Target:はAndroid 2.2-API Level 8を選択
 SD Card:のSize:は2048MiB(2GiB)以下にしておけばOKでしょう。(KiB、MiB、GiBは1000を1024として換算)
 SD Card:のFile:は予め空のファイルを用意しておき、それを指定すればOKです。
 Skin:は解像度の指定をします。このサイトはAndroid 2.2用の解説なので、まさか1.6のXperiaやIS01ユーザという可能性はないと思いますので、Nexus OneやDesireならばBuilt-in:のWVGA800(800�480)でOKです。用意された解像度以外の指定がしたければ、 Resolution:で指定してください。
 Hardware:は複数組み込むことができますので、希望のハードウェアの状態を指定してください。
これらの設定が終わったら「Create AVD」ボタンをクリックすることでAndroid Virtual Device (AVD) ができます。
せっかくですからAndroid Virtual Device (AVD) を起動してみましょう。
左メニュー「Virtual Devices」にて先ほど作成したAVDをクリックして選択し、「Start...」ボタンをクリックするだけです。
Android Virtual Device (AVD) の起動にはとても時間がかかります。
私の非力なATOMマシンでは3分以上かかってしまいますが、実機がない人は諦めて使うしかありません。まあ、AppleのようにiPhoneアプリをエ ミュレータ開発するの にMacを購入しなければならない(10万円程度の投資が必要)とか、iPhoneアプリを配布するのにお金が必要という金額的制約はありませんので我慢 しましょう。
ANDROIDの文字が消え、海の背景が現れれば起動完了です。
メモリは150MB程度は使います。
Eclipseの同時起動を考えると、トータル1GB程度はあったほうが良さそうです。
メニューで選択をして、GmailなどAndroid上での操作もできますので試してみてください。



***4、Eclipseのインストール
Ubuntu ソフトウェアセンターで、「eclipse」を検索して、「Eclipse(統合開発環境のもの)」と「Eclipse Plug-in Development Environment(PDE)」をインストールします。特に「Eclipse Plug-in Development Environment(PDE)」のインストールを忘れると、後に必要なAndroid Development Toolkit(ADT)をEclipseにインストールできませんのでご注意を。
Eclipseの日本語化は必要な人は適宜行ってください。
方法は、
http://mergedoc.sourceforge.jp/
のサイトにてご確認ください。
Ubuntu 10.04で、Ubuntuソフトウェアセンターを用いてインストールされるEclipseは3.5系のGalileoになりますので3.5系の日本語化 を行なってください。
なお、解説は英語版をベースに進めます。



*** 5、EclipseにAndroid Development Tools (ADT) Pluginをインストール
基本的には
http://developer.android.com/sdk/eclipse-adt.html
に記載されている

   1.  Start Eclipse, then select Help > Install New Software.
   2. In the Available Software dialog, click Add....
   3. In the Add Site dialog that appears, enter a name for the remote site (for example, "Android Plugin") in the "Name" field.

      In the "Location" field, enter this URL:

      https://dl-ssl.google.com/android/eclipse/

      Note: If you have trouble acquiring the plugin, you can try using "http" in the URL, instead of "https" (https is preferred for security reasons).

      Click OK.
   4. Back in the Available Software view, you should now see "Developer Tools" added to the list. Select the checkbox next to Developer Tools, which will automatically select the nested tools Android DDMS and Android Development Tools. Click Next.
   5. In the resulting Install Details dialog, the Android DDMS and Android Development Tools features are listed. Click Next to read and accept the license agreement and install any dependencies, then click Finish.
   6. Restart Eclipse.

の通りでOKです。
手順をわかりやすく日本語で書きますと
1、「Help」→「Install New Software...」にてEclipse PluginをインストールするAvailable Softwarダイアログを開きます。
2、Work with:の右端の「Add」ボタンをクリックする。
3、Name:に例えば「Android Plugin」という名前を、Location:に「 https://dl-ssl.google.com/android/eclipse/」を入力し「OK」をクリックする。
4、Available Softwarダイアログに戻ると、Eclipseが自動的にサーチし「Developer Tools」Pluginを発見します。その「Developer Tools」の左にある右三角をクリックすると、「Android DDMS」と「Android Development Tools」が現れますのでその両方ともチェックし「Next」をクリックしてください。
5、Install Detailsダイアログにて「Android DDMS」と「Android Development Tools」がチェックされた状態で「Next」をクリックし、ライセンスに承諾し「Finish」をクリックする。
6、Eclipseを再起動する。
という感じです。



***  6、Eclipseの設定
ツールバーの「Window」→「Preferences」にてPreferencesダイアログを開く。
左のメニューにて「Android」をクリック。
「Android Preferences」のSDK Location:の右端にある「Browser」ボタンをクリックし、Android SDK を展開したディレクトリを選択する。
これで一応の設定は完了です。



*** 7、あとがき
Eclipse側で「File」→「New」→「Project」にて「Select a wizard」ダイアログを出し、「Android」→「Android Project」でAndroidアプリ作成開始です。
EclipseとAVDを同時起動しておくと、Eclipse側の「Run」でAVD側でアプリケーションが実行されます。
同時起動しておかなくても、AVDを立ちあげると作成したアプリケーションがメニューに組み込まれていますので、簡単に実行可能です。
加速度センサーや方位センサーなどの値を取得するようなモジュールにおいては実機でないとテストすらままなりませんが、アルゴリズムテストや各種表示系の テストにおいてはAVDはなくてはならないものになります。

2010/06/30、いよいよFroyoのOTAでのアップデートがスタートしました。
巷ではiPhone4が話題になっていますし、au初のAndroid端末であるIS01が登場しました。
まさにスマートフォン大ブレイクです!
iPhoneのiOSは制約が多いが故に使い勝手の良いOSで、現時点においてエンドユーザにとってはiPhone最も使い安いスマートフォンでしょう。
けれど、お金はないけど技術力はあるという庶民技術者にとってはiPhoneアプリは敷居の高い存在です。
開発環境にMacマシンが必要なので10万円程度、公開に登録料として毎年1〜3万円程度とお金を支払わなければiPhoneアプリを開発したりアップす ることすらできません。
つまり、Nexus Oneを購入するのに半年かかってしまう私のような貧乏人にとってはiPhoneアプリは遠い存在になってしまうのです。
世の庶民技術者の多くの方々も同様でしょう。
その点Androidはすべて無料でできます。
ようやく我々の出番が来たようです。

また、ユーザインターフェイスを除く機能面では、圧倒的にiOSよりFroyoに軍配があがります。
GoogleもFroyoによって機能面ではほぼ完成に近づいたとのことで、次のAndroidアップデートでは、ユーザインターフェイスに焦点を当てて 改良するようです。
私個人としては、世でいわれているほど使いにくいとは全く思いませんが(むしろソフトキーボード入力に関してはAndroidのほうが上だと体感していま す)横スクロールの硬さやメニューでのタップの反応などに関しては極たまに「ん?」と思うことがあるのも事実です。
けれど、Googleと庶民技術者たちの手によって育つAndroidが近い将来iPhoneを超えることは間違いありませんし、そうしなければなりませ ん。

アプリケーションも充実し、エンドユーザにとって最も使い安いiPhone

庶民技術者にとって開発しやすいAndroid & Googleによってより使い勝手の良いユーザインターフェイスに改良

エンドユーザにとって最も使い安いAndroid端末

という方程式を作っていくことが、より我々にとっても最高のモバイル環境の構築になることでしょう。

私のNexus OneのFroyoアップデートはまだ順番が回ってきませんが、1週間以内にはアップデートができるようなので、とても楽しみです。
アップデート後すぐにテザリングもできるようなので、すごいことになりそうです。
これから来る「カンブリアの大爆発」ならぬ「Androidの大ブレイク」に向けてしっかりと準備をして、我々の手で新時代Froyoアプリを続々と登場 させ、我々の手で最高のモバイル環境を切り開いていきましょう!

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